電通「鬼十則」
 電通時代は鬼十則を机の上に飾っている社員もいた。私は対外的には「こんなアナクロなもの、関心ありません」という顔をしていた。今だから告白するが、電通の社員手帳(デンノートという)のそのページを見て仕事への心構えの参考にしたり、勇気をもらったりしていた。
 早期退職して大学の教員の道を進んだのも、大学教授の職を早めに去ったのも「鬼十則」に流れる電通スピリッツが判断の指針になった。
 この言葉は広告業に携わるもの全員に通用するが、マーケティングやコミュニケーションのプランナーとして有用である。そんな解釈も加味してみた。

1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
<プランナーは周囲の観察の中から消費者が次に求めるものを発見し、それをビジネスにするのがよい企画である。上司に課題を渡されたから、それに答えるのは単なる「作業者」であって、プランナーではない。>

2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
<自分のビジネスアイディアは自分から相手に売り込むことで実現できる>

3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
<これはいうまでもない>

4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
<安易なプランニングをしても"時間潰し"にすぎない。常に厳しい環境に自ら置いて行く必要がある>

5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
<自信があるプランなら、とにかく提案をし続け、反対されればその意見をもとにブラッシュアップして行く。途中であきらめるような提案ならはじめからするな>

6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
<企画や提案は自分が主役となってやれ>

7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
<いうまでもないことである>
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
<企画を提案をするときは絶対の自信を持って行う、魅力的なプレゼンテーションを作り上げる>

9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
<顧客の表情を見逃すな、また街に出たら周囲をインサイトし、自分の企画に活用できるか考えつくす>

10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。
<画期的な提案ほど反発が多い、反発をバネにしてさらに企画の質を高める>


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